言わなくてもいい。 わかっている。 おまえは私だけのものにはならない。 おまえの心の中に住むものがいるかぎり。[耳の下に牙を立て、浅く掻き傷を作る。ほんの薄皮一枚ほどの傷。脈打つ血道に、牙が触れる程度の。] 本当に、おまえの心を壊して私だけのものにしてしまおうか。 それとも、おまえの心を奪うものを壊してしまおうか。[声が、酷薄さの色を帯びる。]