― 鏡の間 ―
[今や、部屋にある鏡が映すのは、部屋の中の光景。
様々に縁どられた銀色の面が、長椅子の上の父と子を様々な角度から映し出す。
二人分の重さを受け止めた長椅子が、ぎしりと鳴いた。]
ああ、私に愛を教えた仔よ。
おまえはいつも、そうやって私に綺麗な言葉を返す。
わかっているよ。わかっているとも。
おまえが私を愛していることは。
けれども、そうして整えた言葉の裏で、おまえはなにを考えている?
[胸を合わせるように体重を掛け、唇を寄せて耳に舌を這わせる。
かつり、と一度牙が音を立てた。]