[そもそもの始まりが、『フェンリル』の仇花だった。
かの計画が無かったならば、自分は作られることもなかっただろうか。
あるいはやはり、何らかの形で作られて、此処にたどり着くことになったのか。
そのふたいろの声を、聞くことはない。>>159
けれど、もし聞こえていたとしたら、言うことは一つであったろう。
語る声と表情と心は、どちらに向けるかによって、異なるものであったろうけれど。
“ 生まれた以上は、こっちの領分だ ” と。]
[もう彼女を、守れない。
そのことが、胸に焼けた杭を打たれたかのように、
痛みの無いこの体に、痛みを齎す。
死者の船にいる。
その向かう先にあるであろうラグナロクを、今は、何も知らない。]*