この船の乗客さんかい?
俺、起きたばかりで状況がさっぱりで、
もし何か知ってることがあるなら……
[そう聞きかけた、そのときだったろうか。
Nルームに入ってきた人影に、あ、と言葉を詰まらせる。>>158>>+40
ゲオルグ、と思わず名を呼んだ。
そちらに歩み寄ろうとして、何か――…
何だろう、不意に、何かをひどくかけ違えているような、ぞわりとした寒気が背筋を走る。
けれど、それが何かを考える前に、
ゲオルグが言葉を語り始める、その前に、
先ほど声をかけてくれた彼から、部屋から出ようという提案を聞く。>>+40]
――…
ん、分かった。
どっか行きたいところがあるなら、
案内は出来るよ。
管轄外のところもあるけど、警備員だから。
[わずかな逡巡の後に、頷いてその言葉に従った。
部屋を後にするとき、ふっと、自身の影無き影を爪でなでるような、不吉な何かを感じた気がして、一度だけ後ろを振り返ったのだけれど、
ゲオルグの浮かべていた表情は、背中越しには分からずに、廊下へと去っていっただろう。]*