[抱き締められて、ローレルの不安は銀を溶かすように消えてゆきます。こわいものを、たくさん見てきました。こわいひとたちにも、何人にも会いました。信じた人が、信じられないかもしれなくて、心細かったのです。ぎゅっと親友を抱き締め返すと、なにも心配することなどないのだと思えてきました。名前を呼ばれることは、支配されること。絵本作家志望のローレルは、それにも思い至ることなく、偽りの親友の背に腕を回しました。大切ななにかがこぼれ落ちていく気がしたのは、きっと気のせいというものです。**]