[2発目の銃声がサロンに響いた時、獣は消え失せ、血を吐くローの姿がそこにあった>>52]
ロー…
[――肺をやられている。あれでは永く持たない。
彼ももうすぐ――]
ヴィクトリア、もう大丈夫だよ。
もうすぐ全てが”終わる”。
カレルも、クレメンスのおじさんも大丈夫そうだ。
だから、もう、安心して。
安心していいんだよ…
[子をあやす様に彼女に声をかける。
――そう、全てが”終わる”。
こうしていられる時間も、もう然程残されて居ないだろう。
彼女の背中に手を回す、この右手に彼女の体を感じる。
彼女の体温を感じる。彼女の”命”を――
それは決して叶うことなど無いと思っていた、”夢”のようなひととき。
終わりが近づいて来たならば、最後にもう一つだけ――]