― 杯交わす事始め ―[友や隊の者を除けば表情の変化を示す事の限られる男にとって、独り酒は常の事だった。 故に、その日も私室で静かに飲むつもりでいた。 なお、帰還しても自宅に帰らない理由の一つには、一人でゆっくり飲みたいから、というのがあったりするのは、余談] ……ん?[ぼんやりと巡っていた物思いを破ったのは、軽いノックの音。 とはいえ、訪ねてくるような宛はなく──訝りながらも、扉を開けて]