[
何かあった時には、遠慮なく俺を殺してくれ、と。
妻は、ずっと泣いていた。
「殺してくれ」に対しての返事は返って来なかった。
その後、夫婦間は気まずい雰囲気が続き、会話も徐々に減る。
何も知らない7歳の娘だけは、変わらずに元気なまま。]
お父さん、お母さん、最近どうしたの?
仲良くしないとだめだよ?
(――こんなに無邪気で純粋な娘が、餌に見えるのだから。
俺は、本気で戻れないところまで来ちまった化け物なんだな……。)
[人間としての理性と、自らと完全に同化した、獣としての本能。鬩ぎ合い続け、残り少ない時は流れ。
――それらの決着が着く時。
来るべくして来る時は、僅か数週間後。*]