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[少女の高祖たる吸血鬼が与えた“接吻”は、奪う為でなく与える為のもの。精神の奥深くに、堕落の種子を蒔く為の。
古老は幽体から実体へと位相を移し、娘のしなやかな両腕に冷たい指先を滑らせる]
――お前は虜なのよ、シルキー。
お前の“父”のでは、なく。
吸血の性の、でもなく、
ただ、人であろうとするが故の。
[繊い躰で乗り掛かり、指先伝いに少女の手首をくるりと巡る。紅い瞳を細めれば、その目に映るは闇色の触手。
その出処は長く艶やかな白銀の髪。
ざわめき、のたうち、裡に隠した暗黒を解き放っていた]