― 正体を失くした男の長い一日 ―
[ガートルードから貰った薬は、相乗効果でよくハマった。
……転寝をすればすぐに聞こえてくる、片割れの声。
片割れはいつも自分を呼ぶ。アラン、アラン、と。
そうされていなければ、時々わからなくなる。自分がどっちだったっけ、と
ぼくは騎士になりたかった。
でも、10までに身に着けたぼくという個性は、騎士というものがあまりにもあわなかった
ぼくは誰かを護るよりも、まず自分自身を護る。
私心を殺して剣と盾になどなれやしない。
心根だってそうだ。
――そう、あの日彼女を追いかけなかったように]