[“またあとで”>>88少し離れた場所で、その後ろ姿を見ながら、自身の亡骸の眠る繭が閉じられるのを見ていた。額にも、髪にも、ひとつも感覚はないけれど、その手が触れてくれたぬくもりが、陽炎のようにふっと、思い出される。立ちすくむこの体を、彼女はすり抜けるようにすれ違う。扉が開き、靴音は外へと。そうして、扉が閉まる。その音を聞く片頬に、流れている涙が、あったのだけれど、感触すら感じ取ることが、できないものだから、自分では、気付かずにいた。]