――回想・資料館――
[この体になり幾分か時間が経過した後、自らの死を改めて感じた後。自然と私の体は、最期を迎えた資料館へと向かっていたのです。
私がどのような姿で死んでいたのか確認に行くことは、死んだ今でも、正直怖かったのです。
――それは『人狼に襲われた恐怖』からではなく。
『自分自身が無残な姿になったこと』に対する恐怖。
当時の『血の記憶』が蘇ることに対する恐怖だったのです。]
[あれから数時間は経過したでしょうか。
緊急警報発令下の状況、人通りが少ない場所なのもあり、まだ誰も足を踏み入れた形跡はないようです。
ドアをすり抜け、あの時から光が一度も照らされていない資料館の奥――私が最期を迎えた場所へと向かいました。
――そこには、澱んだ深緋色の中でうつ伏せに倒れ、右手を伸ばしていた『私』だったモノの姿がありました。
そこに居るのは間違いなく自分なのに、見ているだけで嘔吐感を覚える程の凄惨な光景でした。]