[Nルームを出る直前、彼が私の顔を覗き込んだ。
どうしたの?と問う前に、彼の口から出てくる言葉に、目を数度瞬かせる。口を開きかけたものの、いつかのように、ロマンチックねとは言えず。]
……そうかもね。
[ポツリと一言だけ、こぼす。
その一言に、全部の感情を含ませて。
伝わったらいいな、と、囁くような一言。
そうかもしれない。
悲劇を繰り返さぬように。
哀しみを共有できるように。
傷付いた心を癒せるように。
笑って軽口を叩けるように。
そうやって、巡り会う運命だったなんて。
愛がさだめられているみたいじゃないか。
その先のさだめが死であっても。
なんて幸せなことだろう。
……だから。
そうであれば、いいなと……。
強く、強く。
……想い、願った。**]