―― Nルーム ――
[眠りの底から目覚めるように、不意に意識が引き上げられたのは、
程近く遠くで、彼女の声がしたからだ。
部屋の様子も、並べられた繭たちも、その中に眠る人影も、“自分自身”の亡骸すらも、最初目に入ることはなくて、
ただ、彼女の背中が見えた。
――… ああ、泣いている。>>37]
……、
[胸が引き裂かれるような、そんな辛さにぐっと唇を噛んで、
重みのない足取りで駆け寄って、震える肩に触れようとするのだけれど、
幾度触れようとして、その手はホログラムのようにするりとすり抜けて、
噛んだ唇にも、痛みはない。
もしかしたら、五感に似た何かは感じられるのかもしれないけれど、ずきずきと心臓の跡を苛む“痛み”に押し流されて、いずれにせよ今は、感じられずにいるのだ。]