ぼくを更に焦らせたのはドロシーの変化だった。彼女はカークとあんなに仲が良かった筈なのに。今はウェルシュに気持ちが向いているようだ。
いないもの、であるぼくらはどんどん世界から取り残されて行く。
彼女も少しずつ、ぼくの知らない彼女になっていく。そんなゾフィヤに憎しみすら抱いたけれど、それすらただの嫉妬だったのだ。
ぼくにはもうなにもできない。
今更自分の気持ちを伝えることすら許されない場所で、ただ彼女を見つめることしかできなくて。
自分を見て欲しくて受け入れて欲しくて、それが叶わないから憎むしかなかった子供のような自分。
それが、ぼく。
アプサラスじゃ代わりになれない。
ぼくにとっての唯一はゾフィヤだから。
だけど。
彼女はここにきてくれる。
またぼくのそばで笑ってくれる。
そして少しの毒を吐くんだ。いつものようにね。
今度は誰にも邪魔なんてさせない。
真綿でくるむように、やさしく彼女を包んで逃がさない。ぼくの腕の中にいてもらう。
アプサラスにもテオドールにも邪魔させない。