[ 名乗られぬ名を知るのは、男が本当に、触れた全てを余さず記憶している証拠だが、それを告げるは余計だろう、と、漆黒の神はそれ以上は言わず寝台の脇から立ち上がる ]
...どうやら、そろそろ外が騒がしくなりそうだ。私は天上宮の護りに戻る。
其方はゆっくり休むと良い。
[ 言ってから身を翻そうとして、足を止めた ]
十分に回復したなら、空の護りを引き受けている朱雀のいとし子に気を送ってやってはくれないか。
アレも朱雀同様、己の身は顧みず無茶をする性質なのでな。
[ 彼の朱雀の守護者の父母が、まさに天地に生を分けながら、想いを通して絆を結んだ一対であったことも、やはり告げはしないまま、そう願いを口にして、返事がどんなものであったとしても、ただ頷いて、その場を後にした** ]