[ぼうっと考えていると、考えている対象の先生は包帯塗れの外見以外は普段と変わらない様子で、笑顔で私を手招きしていたのです。>>2:242。
招かれるままそっと近付けば。
微かに薬品の匂いが漂う先生の手の甲が、私の頬を伝う涙をそっと拭った後。
その手は私の頭に触れ、幾度か撫でていたのです。
あの血塗れの姿を見た後だったのもあり、先生が何時も通り動いているだけでも嬉しかったのに、先生の優しさがとても嬉しかったのに。
――何故でしょうか。
この時の先生の手は、どこかひんやりと、冷めていたような気がしたのです。]
……ありがとう、ございます……。
[涙を拭って下さったこと、撫でて下さったことも嬉しかったので、私は笑顔で先生にお礼を言いました。
涙を拭ってもらったばかりなのに、また流出してしまい、ますます困らせてしまったでしょう。
あのとき感じた、どこか冷めたようなものはきっと、薬の影響だったのでしょう。そう、思うことにしました。*]