[誰に告げられずとも、透けた身体の青年は頭の奥で悟る。
此処は、"完全な"自分の存在を知覚していないモノには存在できない場所なのだろうと。
つまり、"欠けてしまった"青年は、存在を許されず、また、許されるつもりも無いのだった。
実体を持たぬ身体は端々に黒い塵のようなものを纏わせ、時折不安定にゆらゆらと揺らめいていたか。
手の先から足の先まで見える場所はどこだってそうで、嗚呼、時を止めていられるのも僅かなのかと悟る。
――…だから。]
――…もういい。
[にぃ、と唇を吊り上げ、嘯く。]
"俺が生きていたなら次はエルナだったかも知れなかったんだぜ"
[言い捨てれば、くるりと背を向けた。
上を向くのは…少しだけ、頬の濡れるのを誤魔化すためであったけれど。
浮かび上がり、一度も振り返ることなくそのまま何処までも高く。
――少なくとも、幼馴染の目からは見えなく*なるように。*]