[意識を集中しながら軽く「貴人」から目を逸らす。
その背後にある小石が音もなく転がるのを、表情を変えぬまま見届ける。
「異能」が封じられていないことを確認して、ゆっくり息を吐いた]
生憎、食われる気はねぇし、『そっち』に行く理由もねぇ…端っから行く気もねーけど。
……んな事言われて、はい、そうですか、なんて言えるか、ってんだ!
[この状況で、それでも拒否の意を向けて「異能」を発動させる。
周囲から浮き上がる小石は五つ。今までのこの男ではやらなかった、複数を同時に扱うと言う手。
今、「貴人」は拘束に力を使っている、ならば、ガードは出来ぬと踏んで、その小石を「貴人」へ……出来るなら縄の端持つ右手へと向けて飛ばす。
射抜くほどの威力はない、ただ、その手が緩むか、或い隙が作れないかとの望みを掛けて]