"君は、人間だ。"
[声は――聴き慣れた声だけは、聞こえていたけれど。
びゅうびゅうと唸り始めた冬将軍の白い吐息が意識を浚っていこうと透いた体へ吹き込んでくるのだった。
冷気に当てられて、青年は「目醒める。」]
――…いいや、
俺は…、――…僕は、……狼だ。
[低い呟きを漏らした青年は、重ねられた手>>+16からするりと己の手を抜くと、一転。ほんの少し、飛び上がり、宙へと浮かぶ。]
……解っているんだろう、ニコラス。
ゲルトや、シスターフリーデルを殺したのは――…、喰ったのは…僕だ。
僕が――爪で、牙で、肉を裂き、血を啜って…殺した。
[酷く冷めた口調で青年は告げた。]