今も、私には彼のコエが聞こえている。初めて彼のコエが聞こえた時、赤い靄が見えたと、彼は言っていた。もしかしたら、それが切っ掛けだったのかもしれない。[自分自身できる限りをと、記憶を辿り出した推測を伝える。そんな中、私の指を不意に何かが絡む感触に気付いた。視線を落としても、そこには何もない。けれど、たしかに仄かな温かい重さが感じられて。理由は分からない、けれどどうしても失いたくない、と。その重さを包み込むように、緩く手を握った*]