[ジュシュッ…―――
という肉を裂く音がその場に響いた。
しかし、バルタザールが喰われた訳ではなかった。
バルダザールの得物である、片手剣より大きく、大剣とまではいかない両手剣が、柄の部分を上に刃の部分が下に、つっかえ棒のように大蜥蜴の口にはまっている。
バルタザールを噛もうとした力が、そのまま剣に伝わり、切っ先が下顎を貫き地面に大蜥蜴の身体を縫いとめた形だ]
流石に肝が冷えた。
[抜かりなく誰かがトドメを刺したのを確認して、バルタザールは苦く笑う。
息絶えた大蜥蜴から自分の得物を引き抜き、
一息吐くと、タチアナに向かって礼を一つ]