― 回想・一ヵ月前 ―
[わたしが白狼騎士団に志願したのは、ゾネス要塞の内情探りのためだった。
いずれは難攻不落と呼ばれた要塞を掌握し、北からの侵略を可能とするのが目的だった。
しかし、わたしが赴任して直後に、あろうことか
ちょうどその頃、この国では国王が次期王位継承者を一ヵ月後に指名すると発表があったばかりだった]
一体何のつもりかしらね。
王子サマが自分の国を売ろうだなんて。
[密偵仲間からその話を最初に聞いた時は、冗談かと思った]
もしかして、次の王様に選ばれないことが分かって、ヤケになってるのかしらね?
[だとしたら、あまりに稚拙な理由だ。
実際に聞けば、もっと深い事情があるかもしれないが、個人的な恨みつらみに国の民を巻き込んでいいはずがない。
しかし、こうした君主が過去の歴史上に存在するのも事実。
同情を向けるべき先は、この国の民だ]