―どこか―
[ニコラスといったん別れ、それから行くあてもなくどこかへ。
とりあえず、今はまだエルナは“こちら”へは来ていない、ようだが。
親友の表情が憎悪に歪んだような光景を、一瞬幻視したような気もする――それは、気のせいだと思いたかったが。]
………なんにもないですね、私。
[誰かのために生きて、誰かのために命を捨てた自分をそう評して。
内心で思うのは、もう一人の人狼のこと。客の思惑に合ったパンを提供する達人、オットー。
フリーデルにしてみれば、正直言って彼は苦手な部類の人間に入っていたことを思い出す。彼自身が何をしたいのか解らない……彼自身の欲望がひとつも見受けられない、ためである。
しかし、だからこそ、なのか。
中空に投げた言葉は、オットーに関する感想で。]
………生きている方の化け物は、今は生を望んでいるんでしょうかね………?
[相手には聞こえていないのは解っているが。つまりこれは只の暇つぶしなのである]