[戦況は、はっきり言って好ましくなかった。
元々、敵の奇襲で始まった戦いだ。
アドバンテージはあちらにある]
お前ら、怯むな!
いいか、2日だ。2日稼げば、援軍がやって来る!
大佐殿は出撃前、確かにオレにそう約束した!
[実際は「早ければ」という冠詞付きの言葉だが、今この状況にその情報は不要なものだ]
今のところは、持ち堪えているか……。
[小高い丘の頂上。そこに続く短い坂道には、折り重なるように敵兵の死体が積み上がっている。
だがその時、不意に近くに立っていた兵の頭部が爆ぜ、]
――、別働隊か! 総員、10時の方向!
応射開始してよろしいですね、小隊長殿!
[おたおたと焦る小隊長殿にそう声をかけ、自らも小銃を手に取る。
ひたひたと迫る死神の足音の幻聴を振り払うように、敵兵の姿を照星の中に捉え、微塵の躊躇もなく引き金を引き絞った]