[思えば船に乗ってから何も口にしていない。
────カークにもらった薬も、ハーブティーも飲めないまま私は……
こみ上げてきた涙をぐっと堪え、オクタヴィアに悟られないように明るく振る舞う。]
あ、レストラン行きませんか?
私たち、何も食べられませんけど、匂いかぐだけならタダですし!
[オクタヴィアが行かない、と言っても自分は行くつもりだった。
スープで温かな雰囲気のこの場所のどこかに、あの恐ろしい"人狼"がいるという事実がとてつもなく辛くて、見ていられなかったから。
それでもメイン・サロンからさほど離れていないレストランを選んだのは、自分もその温かな空気の中にいたかったからかもしれない。]**