─ 前日 ─
[少し城下を見てくると言って離れた夫の眷属は然程の時間を置かず戻ってきて。
彼女の帰りを待っていたのだろう、まだする事があると言って入れ違いの形で夫は離れていった。
その背を二人で見送って、城下の様子を聞けないかと見遣った彼女の表情は普段のそれとは違っていて。
どうしたかと問う前に彼女から聞かれたそれは、思いもよらぬことだった。
思わず丸くした目を、緩く苦笑の形に細めた後伏せて微笑み]
いいえ。
我が君が任を受けて発つならば、不在を守るは私の務め。
誇りでもあるこの務めを、誰にも譲るつもりなどありません。
[そう答えながら、夫の眷属たる彼女の手を取ってその目を見上げ]