― ずっと昔の ―[少女が生を受けるよりもうんと前の事。男はまだ少年と呼ばれる年の頃。小石を投げられた。隠す方法を知らぬ背中に小さな塊が投げつけられる。そこには黒い翼が生えていた。禍々しきものを意味するこの翼が。幼い体躯には不釣り合いな其れ。大きく伸びる一対が存在を誇張している小石の量は最初はひとつ。そうしてふたつ。投げる手が増えるほど、石の雨として背に、頭に。そして羽根に鋭い痛みと、それを凌駕する鋭い悲しみとなって降り注ぐ]