─ 回想・聖神神殿 ─
………かぜの、におい。
[ぺこりと頭を下げる少年から伝わる匂いに、ぽつり声を落とす。
柔らかな若葉の様なその匂いは、覚えていないはずの赤子の記憶を擽る様で、懐かしくて、温かい。
神官長と疾風の守護者の邪魔はしてはならないと、対話が終わるまでは静かに傍に控えていたが]
…できることは、がんばる…
[そう言い切った少年の顔は、理由の解らないもやもやを何故か軽くしてくれた。
タチアナに出来ることなど、些細なことしか無いかもしれない。
でも、そうだ。出来ることは、頑張れることでもあるはずだ。
そう考えたら、自分の行動の答えは自ずと決まる]