[槍を手に駆け出す。左から大きく回り込みながら、なるべく犬の首の根元まで近づく。前足が止まっているのは有り難かった。余計な怪我の心配はない。べりっとした音と共に前足片方が床から剥がれ、ばんばん叩いてこちらを牽制してきたが、二人でかかればその効果も半減だった。ソマリの動きを見ながら、タイミングを計る。向こうも計っているのだろう、動きが、距離の詰め方が、殆ど同時だった。こういう所に、この男のセンスを感じる。惜しい、本当に惜しい――東に欲しかったと思ったが、感傷も刹那。]