― 武器保管庫跡 ―
無い、ない、ナイ!
どこだ…データ、データが!
[ドロイドの消化も粗方終わり、人気の無くなった武器庫跡。
煤けたガラクタを必死で掻き分けようとする人影――それは、人によっては残留思念、或いは亡霊と呼ぶかもしれない――があった。
己の肉体は木っ端微塵の焦げカスと成り果てた。
故に彼は、己の死に気づかない。
脳髄が焼き消えたせいか、ところどころ記憶が抜け落ち、世界は都合の良い解釈に歪められる。
だから、さっきからガラクタを掻き分けようと差し込んだ手が、尽くガラクタの山をすり抜けているのにも気が付かない。
もしこれからこちらの声が届かない事があっても、触れようとしても触れられないとしても、それは初めからそのような世界だったと解釈して、気にもとめない事だろう。
もしこちらの声が聞える者がいれば、それはそれでそういうものなのだと納得するだけである。]