[士官学校に入学する際。
校内には持ち込めないからと、帝国と公国それぞれに仕えていた兄たちに、太刀・竜爪と小太刀・虎牙をそれぞれ預けた。
教官として士官学校にとどまっている今も、それらは兄たちの手元に預けたままだった。
だが、もし戦争が始まり士官学校がなくなることになれば、その二振りの刀は兄たちから自分へ返されるだろう。
兄たちも自分も子供を作れない体質だから、養子でも貰わない限りはそれを譲る相手もない。
どうせ譲る子供は作れないのだ。
ならば、己にとって子供のような存在である生徒たちの中でも、一番親しくした愛弟子に譲ろう――と。
その数ヵ月後に、その刀が兄たちの形見として、兄たちの命を奪った凶器として、手元に帰ってくる事になるとは思わずに]