『ひとをわたし達を形成するものは、何か。それはきっと、生きてきた道程にもよると思うわ。
感情を、心を、記憶を、自ら落としていって、ほとんど人形じみていたエレオが違う形で感情を心を紡いだらそれは、もう”わたし”ではない
ねえ、トーマス。そう思わない?
――なんてね。あなたは、それでも。「エルちゃんはエルちゃんだよぉ!」なんて言うだろうけど。
腹の底では何を考えてるかは…ともかくね。
だけどわたしは断言するわ。
今も、あなたの近くにいるであろうエレオの中にわたしはいない。
エレオが生きると望んだその時、わたしは消えたの。わたしというかすかな記録が、エレオの中に残っているだけ。
だけどトーマス。わたしは感謝しているわ。
未来のわたし。わたしでない”わたし”であるエレオのことを知れて良かったと
――あなたに会えて良かったと思ってる。』